Find.もじこうの人 vol.7
左:松浦さん 右:下村さん

場所:松浦孝アトリエ(旧久野邸)

門司港にはまちに魅せられ、まちを愛慕する、様々な人が集まっています。
そんなまちを愛する人同士に出会っていただきました...

下村 初めまして。私は門司港で生まれてから、ずっとこの町で暮らしています。今は2002年に姉と開いたtwin-tという小さなカフェバーを運営しています。初めは友達の集まる遊び場のような場所だったんですが、徐々にいろいろなお客様がきてくださるようになり、本格的なお店になっていきました。今年の春からはもう一つ、小さなカフェも開いて、地元の方や観光に来られた外国人の方とのおしゃべりを今まで以上に楽しんでいます。

松浦 お店は、信号待ちの長いあの三角の場所にありますよね?きっとコーヒーが美味しいだろうなと、ずっと気になっていました。僕も門司港で生まれ育ちました。高校卒業後は東京の美大へ行って、そのまま向こうで6年ほど造形美術の仕事に就き、千葉のテーマパークなどの美術にも携わりました。門司港へ戻ってきてからは門司港アート村、現在の門司港美術工芸研究所へ所属して、初めて自分の作品制作を始めました。今は上席研究員兼所長代理という肩書きで携わっています。

下村 先日、ちょうど門司港美術工芸研究所で行われている展示会へ伺って作品を拝見しました。とても可愛らしくて、素敵ですね。アーティストになられたきっかけってなんだったんですか?

松浦 ありがとうございます。小さな頃から絵を書いたり、ものを作るのは好きだったんですが、美大に行くまでは本格的に美術はやっていませんでした。こう見えてスポーツも得意で、高校卒業時は推薦の話もあったのですが、実は人と競争するのが大の苦手で。それで芸術の道を選びました。東京の大学へ行ける憧れもあったかなあ(笑)。 その後こっちに戻って来たわけですが、しばらくは色々な壁があって、門司港が全然好きになれませんでした。引きこもりたいと思った時期もあったんですよ。

下村 私も若い頃は、今のように門司港という町を意識して考えることはなかったですね。

松浦 それでもアート村という色々なアーティストが集まるアトリエで自然とふれあいながら制作活動していく中で、気持ちが変化していきました。徐々に町へ出て、うろうろ散歩するうちに、段々と門司港との一体感を感じるようになっていったんです。そうすると、自然と良いものに出会ったり、良いことが起こるようになってきて。旧久野邸との出会いも僕がアトリエを探していたら、いいところがあるよと地元の方に教えていただいたことがきっかけなんです。今では何かやりたいことや探し物があるとすぐに散歩へ出かけます。門司港ってそういう場所だと思うんですよね。

下村 私も良い食材を探して歩きます。お店で使う食材はできるだけ地元のものを使いたいという思いがあるので。コーヒー豆も野菜と同じように新鮮なものを求めてあちこち歩き回りました。門司港はお魚もお野菜も新鮮で美味しいものが近くで揃うんですよね。お店の方とお話しするのも楽しくて。私の祖母が栄町の商店街のそばで喫茶店をしていて、小さな頃から商店街にある文具屋さんやメガネ屋さんなど、色んな方に可愛がっていただいたのでその感覚のままなのかも知れません。今は、私のお店に来られる方のホッとする時間のお手伝いが少しでもできたらなあと日々頑張っています。これからもそうしていくと思います。

松浦 僕はこのアトリエを預かったことにとても感謝していますので、時々イベントというか、この土地を敬う祭を開催しています。僕にはない魅力を持った、面白いアーティストの方々に集まっていただき、この土地をもてなしています。また、同時に芸術というものを身近に感じてもらえるきっかけになれば嬉しいですね。これからもこの場所で自分の作品に向き合い、土地に感謝しながら芸術に取り組んでいければと思います。

下村 圭子さん
andante + cafe あるところに / twin-t
2002年カフェバーtwin-tをオープン、2012年手づくりジャムのAndanteをオープン、2018年Andanteを+cafeあるところににリニューアル。
食材や旬にこだわった地元の人にも愛される人気店

松浦 孝さん
門司港美術工芸研究所 上席研究員兼所長代理
高校卒業後、東京の美大へ進学。造形美術の仕事を6年ほど勤めた後、帰郷。門司港アート村の研究員を経て、2018年門司港美術工芸研究所 所長代理に就任。

INFORMATION

  • もじこうの人 vol.7
  • 場所:松浦孝アトリエ(旧久野邸)